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試合レポート

遠かった追加点。互いのスタイルをぶつけ合った激闘の収穫は+1

 

11連戦の4戦目にあたる、延期となっていた水戸戦。互いのスタイルを全面に出して激突した試合は1-1の引き分けに終わった。

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白熱のポゼッションvsカウンター

今季未勝利同士の対戦は、激しいプレッシングで奪って素早く攻めたい水戸と、その背後を突いてボールを動かしゴール前に攻め込みたい大分。奪った瞬間を鋭いカウンターの起点とする水戸を警戒しつつ、大分はGKから数的優位を作ってサイドに展開し、そこからの攻略を狙った。
 
試合はスタートから互いのスタイルをぶつけ合う、まさに予想どおりの展開。スタイルにふさわしく主導権を握りかけたのは大分で、3分には左サイドの粘り強い組み立てから下田北斗のクロスに呉屋大翔が飛び込んでクロスバー。さらにそのこぼれ球を増山朝陽が狙ったが茂木秀にキャッチされた。
 
いい入りをしていたが、7分に失点。相手のカウンターをカットしたクリアボールがスペースに転がったところへ走り込んだ村田航一に拾われる。ドリブルで運びつつパスの選択肢も匂わせマークについていた坂圭祐を惑わせた村田は勢いよくシュート。ボールは左ポストの内側を叩いてゴールに転がり込んだ。

 

呉屋の力業で同点に追いつく

早々に追う立場となったが、プレッシャーに来る相手の背後を突いてボールを縦横に動かして運び、ファウルすれすれなまでに球際の激しい水戸からセットプレーのチャンスも得た。22分には押し込んだ状態からのクリアボールを野嶽惇也が拾って増山に展開するがクロスは茂木がキャッチ。23分には坂のフィードに抜け出した増山のクロスに呉屋が頭で合わせたが、これも茂木に抑えられた。
 
好機は築きながら仕留めることが出来ず、ひとたびカウンターを仕掛けられると攻め込まれもした。ペナルティーエリア内で体を張ってしのいだ場面もある。激しい攻防の中、ようやく36分に同点に追いついた。町田也真人がゴール前に送った長いグラウンダーのパスに呉屋が抜け出し、その対応に出てきた茂木の頭上を抜くテクニカルなシュートを沈める。

 

互いにスタイルを貫くベンチワーク

ともに交代なくスタートした後半の立ち上がりは、再び勢いを醸し出した水戸が立て続けにチャンス。大分も左サイドの組み立てから攻略するが、ゴール前で相手にカットされる。
 
56分、水戸が3枚替え。梅田魁人、杉浦文哉、土肥航大を高井和馬、木下康介、前田椋介に交代した。61分、三竿雄斗のクサビを呉屋が落とし、渡邉新太、増山とつないでオーバーラップした野嶽にスルーパス。だが野嶽が中を確認した一瞬の間に、相手のスライディングで掻き出された。
 
大分は62分、増山と渡邉を井上健太と小林裕紀にチェンジ。小林裕がアンカーで下田が一列上がった。水戸は64分、唐山翔自を曽根田穣に。
 
自陣で構える水戸のカウンターに対し、小林裕と高木駿がリスクマネジメントしながら押し込むお大分。66分には坂が長いフィードで井上を走らせ、その爆速からクロスも供給したが村田に跳ね返された。その2次攻撃から下田のミドルシュートは相手に当たって枠外。セットプレーも含め、好機は築いているのだが2点目が遠い。

 

最後までどちらに転ぶかわからない展開

68分には水戸が松田隼風を大崎航詩、大分は呉屋を長沢駿に同時交代。大分は78分に町田を中川寛斗、小林成を宇津元伸弥に代え、両指揮官とも早めに交代枠を使い切った。
 
好機の数は大分のほうが多かったが、水戸のカウンター攻撃にも威力があり、終盤までどちらに転ぶかわからない展開。戦況は激しさを増し、接触プレーでヒートアップする場面も生まれて、今季初勝利を掴みたい同士の戦いは白熱した。
 
86分にも左サイドの連係から相手を崩し、三竿のクロスに最後は宇津元が合わせたがワンタッチあって枠の左。崩しは華麗だったが、追加点にはつながらない。
 
激しく攻め合うアディショナルタイム3分も尽きようとする頃、アクシデント発生。相手と接触した坂が脳震盪疑いで急遽、上夷克典との交代を余儀なくされる。試合は再開されたが直後に終了。1-1のまま勝点1を分け合う結末を迎えた。

 

それぞれにとっての「勝点1」の価値

ともに直近の第3節から中2日。移動のない大分は先発1人を入れ替えたのみで流れを継続し、「悪い流れを断ち切りたい」という水戸は先発全員を入れ替えた。試合に飢えたメンバーの猛アピールでチームの底上げが進んだと、水戸の秋葉忠宏監督は連敗脱出と今季初の勝点ゲットに喜びあらわ。下平隆宏監督はもどかしさも見せながら、ここを乗り越えればと前を向いた。
 
好機は作れているのだが、なかなか得点に結実しない。呉屋の同点ゴールも、組織的に狙いどおりだったのは町田の縦パスまでで、フィニッシュは難しい体勢でも強引に決めきれる呉屋の個人技。それでも勝点1を詰めたことはよかったが、チームがこのスタイルを標榜する以上は、やはりそれを生かしたゴールシーンで喜びたいところ。
 
プレシーズンから戦術の大枠は仕上がっており、新体制ながらそれなりの戦いぶりは披露している。ただ、「それなり」では勝点3は掴めない。ここから細部をどう詰めていくか。11連戦はまだようやく中盤に差し掛かるところだが、一戦ごとの経験を積み上げつつ完成度を高めていきたい。