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試合レポート

ラスト10分での決壊。相手のパワーに圧され痛恨の逆転負け

 

タレント揃いの相手に対して丁寧な試合運びで臨み、ラインを押し上げられている間はよかったが、次第に押し込まれ、最後に強い圧をかけられて決壊。先制もむなしく直接対決の相手を勢いづける痛恨の逆転負けとなった。

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丁寧に組み立てた前半、チャンスもあったが…

本当に痛恨としか言う他ない。降格圏に沈む同士の直接対決で、相手に勢いを与えるアディショナルタイムの逆転負け。G大阪は残留圏の15位へと浮上し、大分は19位に取り残された。
 
個々の力量の高さを生かしミラーゲームでガツガツ来る相手に対し、丁寧にポジションを取ってミスマッチを作りボールを動かしながら戦った前半。相手を圧倒できていたかと言えばそこは物足りないのだが、小林裕紀の落ち着いたゲームメイクが職人芸とも言うべき渋さで緻密なバランスを保ち、球際激しくファウルの多くなる相手と好対照に見えた。
 
エンリケ・トレヴィザンがパトリックに競り勝ってラインを高く維持できることで、相手をゴールから遠ざけ、危険を回避しながら攻めることも出来ていた。香川勇気の攻守の切り替え早い上下動や三竿雄斗の判断よく繰り出す多彩な攻め手、小林成豪の推進力、長沢駿と周囲との関係性などには、これまでよりも組織の熟成が進んでいることが感じられた。
 
ただ、その時間帯にも得点は出来なかった。24分、クロスに飛び込んだ長沢は昌子源に対応される。42分にも小林成のクロスに長沢が頭で合わせたが枠上に逸れ、長身ストライカーはピッチを叩いて悔しがった。球際激しくマッチアップしてくる相手のファウルでFKのチャンスも多くあったが、いずれも東口順昭に対応されるなどして結実せず。
 
井上健太の背後を小野瀬康介や山本悠樹に何度か使われた場面もあったが、相手の精度不足に助けられた。27分にはパトリックのシュートをポープ・ウィリアムが弾いてエンリケが掻き出し、三竿も体を張った。前半のシュートは両軍ともに2本。試合はスコアレスで折り返す。

 

野村の復帰、呉屋・長沢の2トップで打開を図る

後半頭から、小林成に代わって野村直輝。開幕の徳島戦で負傷して以来の戦線復帰となった。
 
50分には奥野耕平が負傷し、G大阪の右WBが本職の高尾瑠に交代。高尾の勢いあふれる仕掛けにも、香川が果敢に対応する。52分にはウェリントン・シウバのクロスに高尾が飛び込むが、ポープが体を張って阻止。ポープはその1分後にも高尾のクロスに合わせたパトリックのヘディングシュートを阻み、窮地を救う。サイドを起点に徐々に押し込まれる中で、三竿が絶妙なアーリークロスを試みたりもするが、東口に上手く処理された。
 
前半から強度の高い戦いを強いられ疲労が溜まり、58分、片野坂知宏監督は立ち上がりから攻守に奔走した町田也真人に代えて新加入の呉屋大翔を投入。システムを5-3-2に変更し、相手のサイド攻撃に対応して2トップでカウンターを狙った。早速、三竿のフィードに抜け出した呉屋が左CKを獲得すると、60分、そこから待望の先制点が生まれる。野村のインスイングをファーで競ったのは香川。そのこぼれ球を素早くエンリケが押し込んだ。
 
66分にアンカーの長谷川雄志が足をつらせ、羽田健人に交代。先制していたことに少しほっとしたが、ここからのG大阪のギアの上げ方に形勢は逆転する。まずは69分の3枚替え。チュ・セジョンを倉田秋に、ウェリントン・シウバを宇佐美貴史に、一美和成を矢島慎也に。スピードと流動性が増しポジショニングも細やかになった相手は、サイドから中からボールを動かし、大分の対応は少しずつ後手に回った。
 
それでも前がかりになった相手の背後を突いて、78分には追加点のビッグチャンスが訪れた。それまではなかなか高い位置を取れずにいた井上が、ようやく本領発揮して右サイドを抜け出しマイナスのクロス。ゴール前にフリーで待ち構えていた呉屋の加入後初ゴールを誰もが期待したが、わずかに足元深い体勢となり、ワンタッチの右足シュートは大きく枠の上へと逸れてしまった。

 

「押し下げておいてトドメのパワー」なエグい松波采配

79分、松波正信監督は疲労の見える菅沼駿哉に代えてレアンドロ・ペレイラを投入。守備の枚数を削って攻撃陣を増やし、4バックに変更した。さきの3枚替えで存分にラインを押し下げられていた大分にとっては、確信犯がトドメを狙いに来るようなもの。さらなる防戦一方となり、カウンターも発動しなくなってしまった。
 
その様子を見て片野坂監督は81分、上夷克典と井上を刀根亮輔と梅崎司に代えて守備の強度を高める。フレッシュな選手を入れることでもっと球際にチャレンジさせたかったのだと思うが、行けばかわされ、引いてスペースを消せば相手に自由を与えて前線の外国籍選手に放り込まれる。守備組織は統制できず、ただ後追いする場面が目立ちはじめた。
 
84分、矢島のシュートは前に出たエンリケがブロックしたが、そのこぼれ球をレアンドロ・ペレイラに蹴り込まれて同点に。勢いづくG大阪の前に、ゴール前を固める大分はサンドバッグ状態となる。それでもポープがファンブルしつつも必死で押さえ込んでいたのだが、G大阪のパワーとスピードは大分の壁を容赦なく叩き続けた。
 
アディショナルタイムは5分。大分に追加点を取りに行く姿勢は見えず、なんとかしのいで勝点1を持ち帰れれば御の字という様相となった中、すでに逆転負けは必然の流れになっていたのかもしれない。あと1分と少し耐えれば、という90+4分。最後の最後でパトリックがエンリケに競り勝ち、落としたボールは宇佐美の足元へ。ここ最近、わずかな決定力不足に悩んでいたエースは渾身のシュートを突き刺し、完璧な筋書きのような逆転勝利を演出した。

 

ともに交代で入る攻撃陣に期待した中で

ACL遠征から帰ってきて、この試合後にひさしぶりに家族に会える日。有観客で開催したホームゲームでの初勝利。さらにホームで先制されての初逆転勝利と、G大阪にとっては今後の巻き返しへと弾みをつける材料が並んだ。長いトンネルを抜け殊勲の決勝弾を放った宇佐美は涙を流し、会見では「泣いてないです。劇的勝利を演出するためにロート製薬の目薬を点しただけです」とスポンサーを引き合いに出しておどけ、喜びをあらわにした。
 
この明暗を、引きずりたくはない。だが、解決できていない課題がある。力量の高い相手を前にすると球際に寄せられなくなり、ラインが下がってしまうところが、なかなか克服できずにここまで来た。あとは決定力。決めきったレアンドロ・ペレイラや宇佐美と、決めきれなかった大分の選手たちとの違いは、選手たち自身が責任感をもって悔しさとともに痛感しているはずだ。
 
片野坂監督は試合後も苦悶の表情を隠せずにいたが、2トップに光明が見えた部分もある。呉屋がさらにフィットすればその決定力には引き続き期待したいし、梅崎も今節は劣勢の時間帯にWBで出場したが、シャドーで本来のプレースタイルを見てみたいところ。野村もコンディションが上がれば、小林成とともに前への推進力を発揮してラインアップにも貢献できるはずだ。
 
チームは再び中断期間に入り、コンディション回復と新戦力フィットに注力する。次節は川崎F、その次は横浜FMとの上位対決。ずるずると連敗する流れは避けたい。

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