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闘う言葉

【記者会見】下平隆宏監督「ファン、サポーターと喜び合って終われたことが何よりうれしい」

 

まず、今日の群馬戦が最終戦になったが、本当にたくさんのファン、サポーターの方に来ていただいて、1万人を超える入場者の声援に後押ししていただいた。

ゲームのほうも自分たちの目指すスタイルを体現しながら得点できて進んでいった。後半、相手がだいぶ前からプレスをかけてきたことで、苦しくなったシーンもあったが、失点1にしのいで最後を締めくくれた。ただ、本当はやはり90分を通してもっと安定したプレーをしたかったし、今日の展開であれば3、4点取ってもおかしくないゲームだったと思うので、そういった意味では今季ずっと課題だったと思う。

それでも最終戦に勝って、約束どおりファン、サポーターと喜び合って終われたことが何よりうれしいし、本当に感謝している。

 

非常に手応えがあった。いまさらながら(笑)

——いい内容の試合だったが、J1昇格という目標が潰えた中で、どう臨んだか。
 
対群馬のスカウティングをして、相手の特徴的なビルドアップに対してどう守備をハメていくかというところと、攻撃ではわれわれがここ数試合やってきたものをしっかり出していこうというところで、本当に数多くチャンスを作れたと思う。
 
——群馬の特徴的な攻撃に対してどう対策していたか。
 
まず、群馬の後ろが3バックに可変してダブルボランチと5人でボールを動かすというところに対しては、基本的には4-3-3のゾーンのような形で守っていた。3トップはなるべく相手ボランチを背中で消しながら行く。中盤の3枚の選手たちは横にスライドしたりボランチをマークしに行ったりといろんなタスクがあったのだが、中で声を掛け合ってよくやってくれたと思う。
 
——全体の距離感も非常によかったが、評価は。
 
やはり不用意に飛び込むと、相手は後ろに人数をかけているぶん、ボールを動かされて剥がされてしまう。そういうシーンもあったと思うが、仮に剥がされたとしても相手は前線に選手が少ないので、それほど怖くはなかったという印象。それがありながらも、ただ、ボールを持たれる時間帯はどうしてもあったので、そこはイライラせずに多少持たせるくらいでいいと思いながら見ていたし、選手たちにもそういうふうに話をしていた。
 
——今季は後半、修正してきた相手に流れを持っていかれる試合が多く、今日も多少そうなった。今日のいちばんの要因は。
 
まず、終わったあとに群馬のコーチングスタッフとも話したのだが、「0-2だったのでとにかく前からプレスに行った」と。本来は構えて守備をするチームなので前から行くということはあまり準備していなかったと言っていた。なので、本当ならばそれを落ち着いてしっかり剥がしたかった。剥がせたところも何回かあったが、そういうシーンをもっと多く作るべきだったし、フィニッシュを決めなくてはならないというのは、ずっとある(苦笑)。
 
交代選手を入れて本当はもっとゲームを落ち着かせたかったのだが、ちょっと試合の入りに失敗したということだった。ただ、最後に群馬が畑尾選手を入れてきてパワープレーに出るということは予想していたので、僅差のリードだったらハネ(羽田健人)を入れて5バックにして守り切るというプランを用意していた。そうしたときの攻撃ではいままで3バックでやってきたときの良さも出たのかなと、なんとなく、いままでやってきてよかったなと思いながら見ていた。
 
——まさにそういう変遷もたどりながら、昨季の就任後いちばん最初に志した4-3-3システムで、ラストゲームを勝利で終えたことに関しては。
 
はい。非常に手応えがあった。いまさらながら(笑)。最後の4試合で4-3-3を採用したが、本当に、いちばんチャンスを作れていると思う。フィニッシュのところで課題はあるのだが。今日も選手たちとミーティングでも話したが、いまがサッカーをやっていていちばん楽しいと。あとは結果を出してもらうという話をして試合に入った。

 

もっと早い段階で我慢して落とし込んでいればとも

——交代でベンチに下がる選手と抱擁していたが思いは。
 
交代した選手はよくやってくれたと思っていたし、ひとりひとりに感謝した。
 
——やりきった感じか。また、来季につなげるためには、このチームに何が足りなかったか。
 
来季に向けてはわたしは何も知らないので、おそらく何もコメントすることは出来ないのだが、やはり今日、セレモニーでも話したように、このクラブの宝はファン、サポーターだと思っている。これだけ熱心に応援してくれるファン、サポーターがいるクラブというのは、やはり素晴らしい。
 
——退任に至る経緯を。
 
水曜日(8日)に社長とGMと話して、「今季で、ありがとうございました」と伝えられた。もともと2年契約だったのでそれを延長されなかったというかたち。
 
——この2年間で積み上げたもの、残せたものは。
 
最後の4試合はこういうかたちで自分の色を強く出して戦ったが、最初、昨季就任した時点でこれをやりたかった。だが、なかなか上手くいかなくて結果に繋がらなかったりということもあり、試行錯誤しながら、なるべくこのチームに合ったものをやったほうが結果が出るのではないかというところで、選手やスタッフと相談しつつそういうものを選びながらやってきた。
 
やはり昨季、僕が来た時点でJ1復帰というのが大使命だったと思うので、そこに向けてまず結果を出さなくてはならないということに、ちょっと僕自身が囚われ過ぎたかなと反省している。昨季1年かけてもうちょっとしっかり土台を作っていればと。今季も昨季の時点からかなりメンバーも抜けて苦しい陣容の中でスタートした中で、それでもなんとかやりくりして結果を出そうとした。前半戦はそれでいい結果が出ていたのだが、途中から怪我人が多かったりしていろいろと試行錯誤していく中で、いま思えば、最後の4試合で見せたものを、もっと早い段階で我慢して落とし込んでいればよかったとも思っている。ただ、どうしても結果を出さなくてはならないという中で、正直、時間がなかった。
 
——今季は「共創」というアプローチでチームを作った。それに関しては。
 
僕も初めてボトムアップというかたちでやったのだが、選手たちが非常に力を出してくれて、前半の快進撃にあたっては本当にこれをやってよかったなと思っていた。ただ、結果が少し出なくなって勝ちきれなくなったときに、やはりもうちょっと修正してあげられるように、手を差し伸べて施してあげられれば、もっとよかったかなと思っている。
 
——そこは選手に託そうという思いが強かったのか。
 
そうです。なるべく選手やスタッフの意見が擦り合うようなかたちで合わせていこうという意図でやっていた。

 

遠回りだが地道な活動も必要なのではないか

——2年間率いたチームに、最後に提言することがあれば。
 
去り際に提言というほどのことは、ここでは難しいのだが、僕が今季やってみて感じたのは、やはり得点のところだけ。これだけゲームの支配率があったりチャンスを作ったりしながらも、なかなかゴールネットを揺らすシーンが少ない。そこがずっと課題だったというのがある。
 
——今後、トリニータに期待することは。
 
やはりトリニータというクラブは、ファン、サポーターに本当に愛されているクラブ。僕は別のチームでも指揮を執ったことがあるが、トリニータのファン、サポーターからは特別な思いを感じる。セレモニーでも話したが、ホームでもアウェイでもあれだけ、関東在住のトリニータサポーターも含め足を運んでくれるというのは、アウェイでも心強い。もちろんホームでもそう。本当に地域のみんなに愛されているクラブなんだなと。それがこのクラブのポテンシャルなのではないかと思う。
 
予算的にすごく潤沢なチームではないので、僕が考えていたのは、まずはたくさん人がレゾナックドーム大分に来て、ファン、サポーターが増える、それによって「トリニータ面白そうだね」とスポンサーについていただける。そうやってチームに予算が回っていく。そういうことをすごく考えていて、僕自身も一肌脱いだりしたが(笑)、とにかく人を増やしたいなという思いがすごくあった。もちろん勝つこともそうだが、そういう、遠回りだが地道な活動も必要なのではないかと思っている。
 
——ホームゲーム入場者数1万人プロジェクトを自ら呼びかけたことについては。
 
まず昨季、入場者数が1万人を超えた試合では負けていない。リップサービス抜きで言うが、このスタジアムは、1万人以上入ったときの雰囲気の違いが、ピッチの中やベンチにいるときにすごく感じられる。その熱気は選手に伝わるし、プロのサッカー選手にとってはたくさんのファンの前でプレーするのがやはり気持ちいい。その応援がわれわれに伝わって、それが結果に繋がると本当に思っていたので、なるべく多くの試合で1万人超えられたらいいなと思っていた。昨季に比べて今季は1試合平均の入場者数が3000人近く増えているというのは、すごくポジティブなのではないかと思っている。

 

大分の何が好きかと言われたら「人」

——若手の成長について。今節は弓場選手が得点した。保田選手もいい仕事をしていた。2人の評価を。
 
2人とも、昨季初めてプレーを見たのだが、面白い選手たちだなと思っていた。おそらく昨季のルヴァンカップだったと思うが、2人をダブルボランチで初めて起用したとき、いずれこの2人が中盤でトリニータを支えていくのだろうなと感じさせるくらい、2人ともいいプレーをしていた。そこから今季に向けて2人とも主軸になっていくのではないかという中で、順調に伸びてきているのではないかと思う。
 
やはりアカデミー育ちの2人が中盤でチームを支えていくというのは、クラブにとって非常に大事なこと。どのクラブでも生え抜きのボランチ、中盤の選手がいるチームは強いなと思うので、彼らにはなるべく移籍せずにトリニータに残って(笑)、軸となっていってほしいなという思いがある。
 
(弓場)将輝に関しては、プレーは守備のところで強く行けるしハードワークも出来る。攻撃では今日も点を取ったが、攻撃に入っていく迫力があると思う。ただ、ではチームの中でリーダーになっていけるかと言ったら、まだそういうリーダーシップの部分は足りないものがあると正直思っているので、そういうところをもっともっと伸ばしてほしいと思っている。
 
(保田)堅心に関しては、まず、サイズ感や持ち前のフィジカルに恵まれたものがあるので、まずは細かいところの技術の向上と、彼もまだ、なんといっても18歳なので、これからいろんないい経験をして、伸びて、羽ばたいていってほしい。
 
——2年間、大分で指揮を執ってみて。
 
今季は特に、歯痒いゲームが本当に多過ぎて、「なんでこれで負けるんだろう」「なんでこれで追いつかれるんだろう」という歯痒さ、もどかしさに苛まれたシーズンだった。なにかひとつ理由があるというわけではなく、そこにはもちろん僕の責任もあるし、1年を通して歯痒い、もったいないというシーズンだった。
 
あとは大分に来て、本当に、何が好きかと言われたら「人」。いろんないい人に巡り会って、いろんな人と出会って、本当によかったと思っている。